コラム
マンションの資産価値を守る排水管点検とは?実施率を高める方法も解説

マンションの排水管から異臭がする、水の流れが悪いなどのトラブルにお悩みのオーナーも多いのではないでしょうか?排水管の点検や清掃を怠ると、入居者からのクレームが増加するだけでなく、漏水による高額な修繕費用が発生するおそれがあります。しかし、入居者の協力が得られず、実施率の低さに頭を抱えているケースも少なくありません。
本記事では、排水管点検を怠るリスクから適切な実施頻度、入居者が清掃を拒否する理由と実施率を高める方法を解説します。ぜひ参考にしていただき、計画的な排水管管理でマンションの資産価値を守ってください。
マンションの排水管点検を怠った場合のリスク
排水管の定期点検を後回しにしていると、予想外のトラブルが発生し、マンション経営に大きな影響を与える可能性があります。とくに築年数が経過した物件では、配管の劣化が進行しやすく、放置すると取り返しのつかない事態に発展しかねません。
ここでは、以下4つのリスクを解説します。
- 排水不良や悪臭による入居者からのクレーム増加
- 漏水や階下への被害による高額な修繕費用
- トラブル放置による資産価値の低下
- 管理責任を問われ法令違反の可能性も
それぞれ見ていきましょう。
排水不良や悪臭による入居者からのクレーム増加
排水管の詰まりが進行すると、キッチンやお風呂の水が流れにくくなり、入居者の日常生活に支障をきたします。とくに夏場は、排水管内に溜まった汚れが腐敗し、部屋中に悪臭が充満するケースも少なくありません。
このような状況が続くと、入居者からのクレームが急増し、管理会社への不信感も高まってしまいます。クレーム対応に追われると、本来の管理業務に支障が出るだけでなく、口コミで悪評が広がり、新規入居者の獲得も困難になるでしょう。定期的な点検により、トラブルを未然に防ぐことが賢明です。
漏水や階下への被害による高額な修繕費用
排水管の老朽化を見逃すと、ある日突然、配管の亀裂から漏水が発生する危険性があります。とくに上層階で漏水が起きた場合、階下の部屋にも被害が及び、天井や壁紙の張り替え、家財の弁償など、修繕費用は想像以上に膨らみます。
漏水事故の修繕には、緊急工事費用だけでなく、被害に遭った入居者への補償も必要です。場合によっては、一時的な転居費用や家賃減額にも応じなければなりません。さらに、保険でカバーできない部分は、オーナーの自己負担となるケースがほとんどです。定期点検で配管の劣化を早期発見すれば、計画的な補修で費用を最小限に抑えられます。
トラブル放置による資産価値の低下
排水管トラブルが頻発するマンションは、入居率の低下だけでなく、物件そのものの評価も下がってしまいます。不動産市場では、管理状態の良し悪しが物件価値に直結するため、メンテナンス不足は致命的です。
インターネット上の口コミサイトでは、「排水管から悪臭がする」「水漏れが多い」といったネガティブな評価が残り続けます。このような評判が定着すると、家賃を下げても入居者が集まらない状況に陥りかねません。また、将来的に物件を売却する際も、買い手から大幅な値引きを要求される可能性が高くなります。適切な排水管管理は、長期的な資産価値の維持に欠かせない投資といえるでしょう。
管理責任を問われ法令違反の可能性も
マンションオーナーには、建物の適切な維持管理を行う法的責任があります。排水管の不具合を認識しながら放置した場合、建物の区分所有等に関する法律に基づく責任を問われる可能性があります。とくに、排水不良が原因で入居者の健康被害が発生した場合は、損害賠償請求の対象となりかねません。
建築基準法では、建物の所有者に対して適切な維持保全を義務付けています。行政から改善指導を受けても対応しない場合、最悪のケースでは罰則が適用されることもあります。定期的な点検記録を残しておくことは、法的リスクを回避するための重要な証拠にもなるのです。
マンションの排水管点検の頻度やタイミング
排水管点検の適切な頻度は、マンションの築年数や使用状況によって異なります。頻繁すぎると入居者の負担になりますが、間隔が空きすぎるとトラブルのリスクが高まるため、以下のようなバランスの取れた計画が必要です。
- 「年1回~2回」または「築10年以上は1~2年に1回」
- 入居者の入れ替えやトラブル発生時も行う
これらの基準を参考に、物件の特性に合わせた柔軟な対応を心がけることが大切です。
「年1回~2回」または「築10年以上は1~2年に1回」
新築から築10年未満のマンションでは、年1回の定期点検で十分な場合が多いです。しかし、飲食店が入居している物件や、世帯数が多い大規模マンションでは、使用頻度が高いため年2回の点検を推奨します。
築10年を超えると、配管の経年劣化が進行し始めるため、1~2年に1回は専門業者による詳細な点検が必要です。とくに築20年以上の物件では、毎年の点検に加えて、5年ごとに内視鏡検査を実施することで、配管内部の状態を正確に把握できます。定期点検の記録を蓄積することで、将来的な大規模修繕の時期も予測しやすくなり、計画的な資金準備が可能になります。
入居者の入れ替えやトラブル発生時も行う
定期点検以外にも、入居者が退去したタイミングでの点検は効果的です。空室期間中なら、入居者に気を遣うことなく配管の状態を確認できます。また、新しい入居者を迎える前に、排水管を清掃しておくことで、良好な住環境をアピールできるメリットもあります。
さらに、排水の流れが悪い、異臭がするといったトラブルが発生した際は、その都度点検を実施することが重要です。1つの部屋でトラブルが起きた場合、同じ系統の配管でつながっているほかの部屋にも影響が及ぶ可能性があります。早期の対応により、被害の拡大を防ぎ、入居者の信頼を維持できるでしょう。
マンションの入居者が排水管清掃を拒否する理由
排水管清掃の実施率が低い最大の要因は、入居者の協力が得られないことです。オーナーにとっては必要不可欠なメンテナンスでも、入居者側にはさまざまな事情や心理的な抵抗があります。以下4つのおもな理由を理解することで、効果的な対策を立てられます。
- 部屋が汚い・恥ずかしいから
- 何するのかよく分からないから
- 立会いのための日程調整や準備が難しいから
- 排水管清掃自体を忘れていたから
これらの理由を踏まえたうえで、入居者の不安や負担を軽減する工夫が実施率向上の鍵となります。
部屋が汚い・恥ずかしいから
多くの入居者が排水管清掃を拒否する最大の理由は、他人に部屋を見られることへの抵抗感です。とくに1人暮らしの方は、普段から掃除が行き届いていない場合も多く、業者が入室することに強い心理的ハードルを感じています。
実際のところ、排水管清掃では水回りのみの作業となるため、リビングや寝室に立ち入ることはありません。しかし、この事実を知らない入居者は、部屋全体を見られると誤解していることがよくあります。また、キッチンや浴室も散らかっていると、その場所だけでも見られたくないという気持ちが働きます。事前の案内で作業範囲を明確に伝え、プライバシーへの配慮を示すことが大切です。
何するのかよく分からないから
排水管清掃の具体的な作業内容を理解していない入居者も多く、漠然とした不安から協力を躊躇するケースがあります。「大がかりな工事をするのではないか」「部屋が水浸しになるのでは」といった誤解が、拒否につながっています。
実際の作業は、高圧洗浄機など専門機器を使用して、配管内の汚れを除去するものです。しかし、こうした情報が入居者に伝わっていないと、必要以上に警戒されてしまいます。写真や図解を使った分かりやすい説明資料を作成し、作業の流れを可視化することで、不安を解消できるでしょう。
立会いのための日程調整や準備が難しいから
仕事や家庭の事情で、平日の日中に在宅することが困難な入居者は少なくありません。とくに共働き世帯や、不規則な勤務の方にとって、清掃業者の訪問に合わせて休暇を取ることは大きな負担です。
清掃当日までに水回りを片付けなければならないというプレッシャーも、協力を妨げる要因となっています。忙しい日常の中で、わざわざ掃除をしてまで清掃を受ける必要性を感じられない入居者も多いのが実情です。土日や夕方の時間帯での実施、複数の候補日の提示など、入居者のライフスタイルに配慮した柔軟な対応が求められます。
排水管清掃自体を忘れていたから
案内文書を受け取っても、日々の忙しさに紛れて清掃日を忘れてしまう入居者は意外と多いものです。とくに、数週間前に配布された案内は、ほかの郵便物に埋もれて見落とされがちです。当日になって「忘れていた」と慌てる入居者や、外出してしまい不在となるケースも珍しくありません。
こうした状況を防ぐには、複数回のリマインドが効果的です。初回案内から1週間前、前日といったタイミングで、掲示板への貼り出しやポスティングを行うことで、認知度を高められます。また、最近ではメールやSNSを活用した連絡方法も、若い世代の入居者には有効でしょう。
マンションの排水管清掃で実施率を高めるために
入居者の協力を得て実施率を向上させるには、戦略的なアプローチが必要です。単に清掃の日程を通知するだけでなく、入居者の立場に立った工夫を凝らすことで、協力的な姿勢を引き出せます。以下3つの方法を実践することで、着実に実施率を改善できます。
- 清掃の必要性を示す案内文を作成する
- 複数の候補日を選択できるようにする
- 管理費から支出される旨を明確に伝える
これらの取り組みを組み合わせることで、入居者の理解と協力を得やすくなります。
清掃の必要性を示す案内文を作成する
単なる事務的な通知ではなく、入居者にとってのメリットを前面に出した案内文を作成することが有用です。「快適な生活環境の維持」「悪臭や詰まりの予防」といった、身近な問題解決につながることを強調しましょう。
過去の事例を交えることも効果的です。たとえば、「昨年排水管の詰まりで、修繕に多額の費用がかかりました」といった事例を示すことで、他人事ではないという意識を持ってもらえます。さらに、作業時間の短さや、水回りのみの限定的な作業であることも明記し、心理的なハードルを下げる工夫が大切です。
複数の候補日を選択できるようにする
画一的な日程設定ではなく、入居者が都合のよい日を選べるシステムを導入することで、実施率は大幅に向上します。平日だけでなく、土日を含めた複数の選択肢を用意しましょう。
具体的には、2週間程度の期間を設定し、その中から3つ以上の候補日を提示する方法が効果的です。また、午前・午後・夕方といった時間帯の選択肢も設けることで、さまざまな生活パターンに対応可能です。最近では、オンライン予約システムを活用し、入居者が自由に日時を選べる仕組みを導入している管理会社も増えています。こうした利便性の向上は、入居者の満足度の向上にもつながります。
管理費から支出される旨を明確に伝える
排水管清掃の費用について、入居者が追加負担を心配するケースは少なくありません。「清掃を受けたら別途請求されるのでは」という不安から、協力を渋る方もいます。
案内文には必ず、「清掃費用は管理費に含まれており、追加のご負担はありません」と明記しましょう。むしろ、清掃を受けないことで、将来的に個人負担での修繕が必要になるリスクがあることもあわせて説明すると効果的です。
すでに支払っている管理費の一部が、予防保全に使われていることを理解してもらうことで、「受けないともったいない」という意識を持ってもらえます。費用面での透明性は、信頼関係の構築にも重要な要素です。
まとめ:安心してマンションの排水管点検を行うために
マンションの排水管点検は、入居者の快適な生活と物件の資産価値を守るために欠かせない管理業務です。定期的な点検により、トラブルを未然に防ぎ、高額な修繕費用の発生を回避できます。また、入居者の協力を得るためには、清掃の必要性を丁寧に説明し、柔軟な日程調整を行うなどの工夫が大切です。
株式会社一善では、経歴18年以上の技術者が責任を持って、集合住宅の排水管高圧洗浄から排水管内視鏡調査まで幅広く対応しています。大型物件から小型物件まで豊富な実績があり、東京・神奈川・埼玉・千葉エリアで給排水の専門家として、質の高い技術をご提供しています。排水管のメンテナンスでお悩みの際は、ぜひお問い合わせください。
この記事の監修者

梅田 一成
株式会社一善/代表取締役
プロフィール
1989年5月5日 牡牛座 AB型
《出身》
埼玉県
《趣味》
旅行・ドライブ(車好き)・お酒・ご飯
《資格》
排水管清掃作業監督者、排水管清掃技士、貯水槽清掃作業監督者、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者