コラム
集合住宅で排水管清掃が必要な理由と実施率を高める連絡方法も紹介

マンションや店舗の排水管から発生する、詰まり汚れや悪臭にお悩みではありませんか?その問題を放置すると、入居者の退去や突然の営業停止など、事業の根盤を揺るがす事態を招きかねません。ときには高額な損害賠償問題に発展するケースもあります。
本記事では、マンションオーナーや店舗経営者の皆様へ向けて、排水管清掃を怠るリスクとその重要性を解説します。安定した事業基盤を守り、将来の安心を確保するために、ぜひお役立てください。
集合住宅で排水管清掃が必要な理由とは?
排水管清掃は、単なる定期的なメンテナンスではありません。安定した集合住宅経営を守るための、重要なリスク管理活動です。清掃を怠ると、入居者の不満から建物の資産価値低下まで、さまざまな経営上の問題を引き起こす可能性があります。
ここでは、排水管清掃を怠った場合に起こりうる4つのリスクを解説します。
- 入居者の不満が噴出する悪臭や詰まり
- 害虫発生による入居率の低下
- 高額な損害賠償に発展する漏水事故
- 建物の資産価値を静かに蝕む配管の劣化
これらのリスクは、どれも安定した賃貸経営の妨げとなる重大な要素です。
入居者の不満が噴出する悪臭や詰まり
排水管からの悪臭や水の流れの悪さは、入居者の満足度を直接的に低下させます。キッチンや浴室など、日常生活に密接した場所で不快な思いが続くと、物件に対する不信感につながるでしょう。最初は小さなクレームでも、対応が遅れれば大きな不満へと発展します。
その結果、SNSなどで悪い評判が広がり、物件全体のイメージダウンは避けられません。予防的な清掃は、入居者の快適な暮らしを守り、無用な退去リスクを減らすための鍵となります。
害虫発生による入居率の低下
清掃されていない排水管の内部は、ゴキブリやチョウバエなどの害虫にとって格好の住処です。管内に溜まった油脂やヘドロが、害虫の餌や産卵場所を提供してしまうのです。一度「害虫の出る物件」というイメージが付くと、衛生的な環境を求める入居希望者から敬遠されてしまいます。
内見時に害虫に遭遇すれば、契約に至る可能性は極めて低くなるでしょう。定期的な清掃は衛生環境を維持し、物件の魅力を保つために不可欠な対策です。
高額な損害賠償に発展する漏水事故
排水管の詰まりを放置した結果、行き場を失った水が配管の接続部などから溢れ出すことがあります。これが階下への漏水事故に発展すると、甚大な被害をもたらしかねません。
階下の部屋の天井や壁のクロス張替え、フローリングの修繕、家電製品などの家財損害まで及んだ場合、その賠償責任は高額になります。店舗の場合は営業補償まで含まれることもあり、被害の規模によっては想定を超える金額になりかねません。
オーナーの管理責任が問われ、火災保険などでは補償しきれないケースも存在します。定期的な清掃は、こうした経済的損失を防ぐもっとも効果的な予防策です。
建物の資産価値を静かに蝕む配管の劣化
目に見えない排水管のメンテナンス状況は、建物全体の資産価値に直接影響します。油脂や洗剤に含まれる化学物質は、長期間付着することで配管内部を腐食させ、劣化を早めてしまいます。
劣化が進行すれば部分的な修繕では対応できず、建物全体の配管を取り換える大規模な更新工事が必要です。その費用は莫大であり、将来の収益性を大きく圧迫するでしょう。定期的な清掃は配管の寿命を延ばし、長期的な視点で資産価値を守る活動です。
排水管清掃は誰が負担するのか?
排水管清掃の費用負担は、建物の所有形態や管理体制によって異なります。分譲マンションと賃貸集合住宅では、それぞれ責任の所在が明確に分かれています。入居者が故意に詰まりを発生させた場合などを除き、個別の入居者に費用が請求されることは通常ありません。
ここでは、以下2つを解説します。
- 分譲マンションの場合は管理組合
- 集合住宅の場合はオーナーまたは管理会社
費用負担の仕組みを正しく理解することで、計画的な清掃の実施が可能になります。
分譲マンションの場合は管理組合
分譲マンションにおける排水管清掃の費用は、管理組合が負担します。各区分所有者から集めた管理費や修繕積立金が、共用部分である排水管の維持管理費用に充てられるためです。
清掃の計画や業者選定は、管理組合の理事会が中心となって進め、総会での承認を経て実施されます。日々の管理業務を委託している管理会社は、あくまで管理組合の決定に基づき、予算執行や業者との連絡といった実務を代行する立場にあります。
集合住宅の場合はオーナーまたは管理会社
アパートや賃貸マンションといった集合住宅では、建物のオーナーが費用を負担します。排水管はオーナーの所有資産であり、その維持管理は賃貸経営における基本的な責務だからです。
オーナーは家賃収入などから清掃費用を捻出し、計画的にメンテナンスを実施します。物件の管理を不動産管理会社に委託している場合は、管理会社がオーナーの代理として、業者選定や支払い手続きを行うのが一般的です。最終的な費用負担者はオーナーとなります。
マンションや集合住宅で排水管清掃を行うための準備
専門業者による排水管清掃を円滑に進めるためには、オーナーや管理組合による計画的な準備が不可欠です。業者選定から入居者への連絡まで、事前の段取りが清掃の質や実施率を大きく左右します。行き当たりばったりの対応は、トラブルや追加費用の原因になりかねません。
ここでは、清掃を成功させるための5つの準備を紹介します。
- 排水管清掃の専門業者を探す
- 見積もりと現地調査を依頼する
- 入居者に排水管清掃の実施日を連絡する
- 入居者に排水管周りの整理整頓をお願いする
- 排水管清掃の当日立ち会いを行う
これらの手順を1つずつ着実に進めることで、スムーズな清掃実施が実現します。
排水管清掃の専門業者を探す
まずは信頼できる専門業者を探すことから始めます。インターネット検索や業界団体のリスト、ほかのオーナーからの紹介などを活用して、複数の候補を見つけましょう。業者のWebサイトでは、集合住宅の清掃実績が豊富かどうかを確認します。
とくに、所有する物件と同じような規模や構造の建物を手がけた経験があるかは重要な判断材料です。損害賠償保険に加入しているかどうかも、万が一の事故に備えて必ずチェックすべきポイントです。
見積もりと現地調査を依頼する
候補となる業者を2~3社に絞り込んだら、相見積もりを依頼します。正確な見積もりを得るためには、可能であれば現地調査をお願いするのが望ましいです。見積書を受け取ったら、総額の安さだけで判断してはいけません。
清掃範囲や作業内容、高圧洗浄とワイヤー洗浄などの工法の違いが、料金にどう反映されているかを確認します。不明瞭な項目がないか、追加料金が発生するケースについても事前に質問し、納得のいく業者を選定しましょう。
入居者に排水管清掃の実施日を連絡する
清掃業者と契約し、実施日時が確定したら、速やかに入居者へ連絡します。入居者の協力なくして、全戸の清掃を完了することはできません。清掃日の1ヶ月~2週間前を目安に、掲示板への告知文の掲示や、各戸ポストへの案内文の投函を行います。
案内文には、清掃の目的と重要性、日時や作業の所要時間、在宅協力のお願いなどを分かりやすく記載します。日程の都合がつかない入居者のための、連絡先や対応方法も明記しておくと親切です。
入居者に排水管周りの整理整頓をお願いする
清掃当日の作業をスムーズに進めるため、入居者には事前に水回り周辺の整理整頓をお願いしておく必要があります。とくにキッチンシンクの下や洗面台の下、洗濯機の排水パン周辺は、作業スペースの確保が不可欠です。
案内文の中に、具体的な片付けの範囲をイラストなどで分かりやすく示すと、入居者の理解を得やすくなります。荷物の移動が困難な高齢者世帯などへは、個別に声をかけ、サポートの有無を確認するなどの配慮も大切です。
排水管清掃の当日立ち会いを行う
清掃当日は、オーナーや管理組合の担当者が立ち会い、作業が契約どおりに進んでいるかを確認します。全戸の作業に付き添う必要はありませんが、作業開始時と終了時には顔を出し、業者からの報告を受けるのが望ましいです。
とくに、作業の進捗状況や、何か問題が発生していないかを把握しておくことは肝要です。入居者と業者の間でトラブルが起きていないかにも気を配り、円滑なコミュニケーションの橋渡し役を担います。
排水管清掃の実施率を上げる入居者への連絡方法
集合住宅の排水管清掃において、オーナーがもっとも苦労するのが全戸の協力を得ることです。実施率が低いと清掃の効果が半減し、未実施の部屋が新たなトラブルの原因になりかねません。高い実施率を達成するには、入居者の理解と協力を促す、丁寧で計画的な連絡が不可欠となります。
ここでは、実施率を高めるための連絡における4つのポイントを紹介します。
- 清掃の必要性を伝える告知文を早めに掲示する
- 各戸のポストへ案内文を直接投函する
- 不在者や未回答者への個別連絡を行う
- 協力世帯への感謝と結果報告を行う
これらのアプローチを組み合わせることで、入居者の協力的な姿勢を引き出せます。
清掃の必要性を伝える告知文を早めに掲示する
排水管清掃の実施が決まったら、まずは1ヶ月ほど前にエントランスの掲示板など、入居者の目に付きやすい場所に告知文を掲示します。この段階では、清掃がなぜ必要なのか、その重要性を丁寧に伝えることが目的です。
単に「清掃します」と通知するのではなく、「悪臭や漏水を防ぎ、皆様の快適な暮らしと資産価値を守るため」といった、メリットの表現を心がけます。早めに知らせることで、入居者もスケジュール調整がしやすくなります。
各戸のポストへ案内文を直接投函する
掲示板での告知と合わせて、実施日の2週間前を目安に、より詳細な案内文を各戸のポストへ投函します。この案内文には、実施日時や作業の所要時間、在宅のお願い、事前の準備内容などを具体的に記載します。
不在時の対応方法や、問い合わせ先の連絡先も明確に記しておきましょう。書面で各戸に配布することで、掲示を見逃した入居者にも確実に情報を届けられます。書式や文面は、丁寧で分かりやすい言葉を選ぶことが大切です。
不在者や未回答者への個別連絡を行う
案内文を配布したあと、回答期限を設けて出欠を確認します。期限を過ぎても回答がない世帯や、不在と回答した世帯へは、個別に連絡を取る必要があります。電話や訪問など、状況に応じて丁寧なアプローチを試みましょう。
高圧的な態度ではなく、あくまで「ご協力のお願い」という姿勢を崩さないことが賢明です。日程の再調整が可能かなど、代替案を提示することで、協力が得られるケースも少なくありません。粘り強い対応が実施率の向上につながります。
協力世帯への感謝と結果報告を行う
無事に清掃が完了したら、協力してくれた入居者への感謝を伝えることも忘れてはいけません。掲示板に「ご協力ありがとうございました」という御礼文を掲示するだけでも、入居者の満足度は向上します。
可能であれば業者からの作業報告をもとに「トラブルなく全戸の作業が完了しました」といった簡単な結果を報告すると、より信頼感が高まるでしょう。こうした丁寧な事後フォローが、次回の清掃への協力的な雰囲気を作ります。
まとめ:集合住宅の排水管清掃はコストではなく未来への投資
集合住宅の排水管清掃は、資産価値を守るための大切なメンテナンス活動です。トラブルを未然に防ぎ、入居者が安心して暮らせる環境を維持するため、信頼できる専門家による定期的な清掃が欠かせません。
株式会社一善は、給排水の専門家として信用と信頼を大切にし、丁寧な対応を心がけております。経歴18年以上の経験豊富な技術者が、大型マンションから小型物件まで、責任を持って質の高い施工をご提供します。
排水管の高圧洗浄から内視鏡調査まで、建物の状況に合わせた最適なプランを提案可能です。集合住宅の排水管に関するお悩みや清掃計画のご相談は、ぜひ一度私たちにお聞かせください。
この記事の監修者

梅田 一成
株式会社一善/代表取締役
プロフィール
1989年5月5日 牡牛座 AB型
《出身》
埼玉県
《趣味》
旅行・ドライブ(車好き)・お酒・ご飯
《資格》
排水管清掃作業監督者、排水管清掃技士、貯水槽清掃作業監督者、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者